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「劇場的春、京都」アーカイブ

「劇場的春、京都」実行委員会が2015年度より行った、京都の劇場インタビューのアーカイブを行うページです。お問い合わせは kyoto.e.season@gmail.com までお願い致します。

WEB連載 第2回「人間座スタジオ(後半)」

( 前半の記事はこちらから↓)

 

 

貸し劇場として

菱井:また演劇のために作ったスタジオだから、みんなに使ってもらうっていうのが一番いいことやし。

合田:何がきっかけで貸すようになったんですか?僕らとか劇団紫(※12)とかにも、最初貸してなかったですよね。

菱井:なかった。だから、お金に困ってくるやんか(笑)。公演うったら赤字になるし。ほんで、誰か使ってくれへんかって。最初はどっこも言うてくれはらへんかったけど。

合田:貸すって言うてたのは言うてたんですか。

菱井:今みたいにネットとかがないやんか。口コミみたいな事で知ってる人に言うたりはするけどほとんど無かったわけ、最初何年かは。

葛川:(手元の資料を見て)劇場として貸し出し始めたのは99年くらいとなっていますが。

菱井:ここが2000年に建ったから、もうちょっと後になってくるんやと思う。貸そうとしてたんやけど1、2年はあかんかったと思うよ。

合田:劇団紫も先輩の資料が残ってたりして、最初アトリエ劇研(※13)とか借りてて。2004年か5年くらいから(人間座を)借り出してる。

葛川:じゃあこの10年くらいのこと。

菱井:そう、まだそんなに経ってへんのよ。

※12 1978年に佛教大学の学生が大学内の団体として結成した学生劇団。
※13 アトリエ劇研は左京区の下鴨に位置する民間の小劇場。 1984年「アートスペース無門館」としてオープン、1996年より現在の名称になる。

 

若手の演劇について

合田:今、結構若い、僕らもそうでしたけど、多田君もそうですけど、若い子達とかがよく(人間座を)借りるじゃないですか、それってどうなんですか?

菱井:物凄い刺激になるって言うか、素晴らしいと思うよ。

合田:素晴らしい?

菱井:もう、発想が全然違うもん。芝居っちゅうのは、こういう風にして、声はこういう風に出してとか、あたしらは締めつけられて育ってきたわけやろ。

合田:新劇の流れを組む、ということですか?

菱井:そう、新劇の流れを組んでるからね。でもあんたら新劇もなにも見たことない人が勝手にやってるやんか、ものすごい勢いで(笑)。

合田:そうですね、勝手に。ほんと勝手にやってますね(笑)。

菱井:もうね、発想が自由で、奔放でね。それがものすごい魅力やわ。

合田:ふふふ(笑)。

菱井:でも絶対にそれは必要やと思う。で、またひょっとしてあんたらが古い芝居を取り入れることがあっても、自分たちの発想でそれを作り替えるんじゃないかと思うねん。

合田:そうですね。

菱井:きっとすると思う。

合田:またそれも新鮮に映りますもんね。

菱井:そうなった方がいいと思う。人間座の公演では、新劇の古い俳優も、若い人も一緒になって芝居をやってるけど、またそれもいいと思うねん。

合田:いいと思う?

菱井:いいと思う。自分たちの年代の人ばっかりでやってるよりも、これはこれで発見があると思うし、私自身もそうやけど、古い人は発想が貧弱で固まってると思うねん。

合田:演劇に対する考え方ですか?

菱井:考え方とか、演技でも、もう固まっていくって言うのか、自由にできないと言うのか、それではアカンと思うねん。

合田:(笑)

菱井:いつもね、スタジオの公演のどんなん見ても発見がある。だから私は嬉しい。この会場でこんなんできるねんなあと思う。何も昔みたいに大道具をガーって飾らんかっても全然十分。

葛川:ふふふ(笑)。

合田:新しい発見があって。

菱井:新しい発見があるしね。うちが一番苦しむのは、既成の脚本はシェークスピアとか賞を取った作品とか有名なのしか本屋さんにないやんか、ほとんどな。みんなも書いてるけど、わからへんやん。埋もれてるやんか。自分たちではやってるけど、大きくは広がらんから知らんやん。そやけどね、書ける人は書いて、発表した方がいいと思うねん。何故なら既成の脚本はどこでもやれるし、どこでもやってるから、もうそんなの面白くないねん。

葛川:(笑)

菱井:そやけども、書く人間も辛いと思うねんな。なんでか言うたら、どういう風なものを書いたらええかが結局問題になるやんか。書くことがわかったらガーって書けるけどな。この「何を書くか」っていうことやろ。自分だけではなくて、世の中って言うのと、結びついてないとアカンことがあると思うねん。

合田:世間がどうなってるか、観察しながらでないとね。

菱井:そやろ?生きてる限りは世間と対立していくということもあるやんか。だからそれをゴリゴリと書いてくれるっていうのが、物凄くいいと思ってます。そういうのがやれたらなって私自身は思います。
そんな何年も昔の作品を持ってきて現代とつなげるいうたって無理がいっぱいあるもん。

合田:そうですね、書かれた時の情勢とかも全然違うし。

菱井:現代を生きてるんやから現代をやっぱり。小説の人の方がどんどん書いてるような気がする、社会の問題点を。

合田:まあでも、そうかもしれないですね。

菱井:演劇の方が取り上げるものが遅れてる気がするわ。

合田:小説家はすごい自由というか。

菱井:うん、自分1人で書いたらええいうようなもんやけど。

合田:あんま売れんでもなんとかなるんでしょうね。

 

あらゆるところへ

合田:最初人間座さん使わせてもらって、それから僕らも劇研とかに出て行ったりするじゃないですか。ちょっと大きいところに。それはどういうふうに思ってみておられるんですか。

菱井:私は今でも日本中が私の劇場っていう考え方を持ってる。あのね、真山美保(※14)っていう女の人がいはったんやけど、その人は「日本中が私の劇場」って言って、芝居を持って日本中を巡回していかはるねん。そんなん見てるから、私もその人のようでありたいと思ったものや。どこでも行けるもんなら行ったほうがいいと思うよ、そりゃ。大きな劇場だけじゃなくても。ほんまに演劇が好きやったらな、あらゆるところへいかなあかんわけやろ、テントでもできるし、また地方のおじいさんおばあさんに(観てもらうの)でもええちゅうことになるやんか。それにこれからは海外へも行かな。まあお互いにがんばって私もどこまでいくかわからんけど。演劇が好きやったらな、そうしよ。

※14 1922-2006。劇作家、演出家。著書に「日本中が私の劇場」(平凡社 1957)。

 

京都の演劇、これまでとこれから

葛川:今後、京都の演劇がこういう風になってほしいというのはありますか?

菱井:あのね、京都の演劇ってね、昔のくるみ座や人間座の田畑が考えていたのは、みんな「東京、東京」って言うやんか。だから東京に絶対に負けない芝居を作ろうと言う気負いはあった。それでもやっぱり、若い人はあっちに行ってしまうけど。今は松田さん(※15)、鈴江さん(※16)や土田さんやマキノさん(※17)やら、京都から出てはるやんか。ほんでその才能を東京がバーッと拾ってみんな向こうに行ってしまう。そやけど、向こうに行かないで、有名になってもこっちで力を発揮していってほしい。京都の演劇を育ててほしいと言うのかな、そんな気はすんねん。でもあっちに行ってしまうのはどうなんやろ?

合田:でも、土田さんとかは京都でやってはるし、ヨーロッパ企画(※18)とか京都拠点ですね。

菱井:そうや、三浦基さんは東京から京都へ来はったんや。そんな人もいはるな。とにかく、東京に負けないものを作って、京都から文化を発信していってほしいと思ってるよ。

合田:なるほど。

※15 松田正隆(1962-)。劇作家、演出家。京都にて時空劇場(1990-1997)を旗揚げ、主宰。フリーの劇作家の期間を経て2003年からは演劇集団であるマレビトの会を結成。
※16 鈴江俊郎(1963-)。俳優、劇作家、演出家。1993年に劇団八時半を旗揚げ、2007年に劇団活動休止。現在はoffice白ヒ沼の代表を務める。
※17マキノノゾミ(1959-)俳優、劇作家、演出家。1984年に劇団M.O.P.を旗揚げ。劇団は2010年に解散。
※18 1998年、同志社大学演劇サークル、同志社小劇場内のユニットとして劇作家、演出家である上田誠らが、結成。京都を拠点として活動している劇団。

 

戯曲の話

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菱井:土田さんやら鈴江さん、松田さんやらが(本を)出さはったやんか(※19)。

合田:はい、自分たちで。

菱井:ガリ板なんかで出してはるやん。今だったらパソコンですぐやん。

合田:そうですね。

菱井:あんな風にみんなで一冊にしてさ、それで配っていくというのか売っていくというのか、あんなんもしたらいいと思う。あれは賢かったと思う。あとは送りつけるとか。各劇団に。

合田:ああ(笑)。

菱井:私らでも探すやん。今年はどういう作品をしようか思うて。この人数だったらいけんな、とか。多かったらできんなとか。読む場合があるやん。

合田:そうですね、近い世代でやったらいいですね。

多田:最近は本に出さなくても、戯曲賞を取らはったままごとさんとか、アマヤドリさん(※7)とか、もう戯曲を無料公開するっていう方針にしてて。

菱井:ネットで?

多田:ネットで。それを、学生はすごい見てます。

菱井:高校生でもね、演劇のコンクールが毎年あるのやけど、この作品はどこで探してきましたかって聞いたら、ネットって。だからね、お金にはならへんかもしれへんけどね、みんな探してんねん、戯曲を。

合田:菱井さんはどうやって探すんですか?

菱井:私はネットが弱いんで、やっぱり図書館へ行ったり出版されているもので探したりするのが多いですね。

合田:世代の差、ですかね。

菱井:そやね。

葛川:今日はいろいろ聞かせてもらいましたけど。

合田:昔も今も劇団やっていく上でもめごとの原因とかは一緒なんやなって。

菱井:一緒(笑)。

葛川:お金とモチベーションね(笑)。

合田:ちょっとほっとしましたね。

葛川:ありがとうございました。

※19 1995年に創刊された演劇同人誌「LEAF」。

 

以上

WEB連載 第2回「人間座スタジオ(前半)」

京都演劇の系譜をたどる劇場インタビューシリーズ
〜WEB連載 第2回「人間座スタジオ」〜

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話し手:菱井喜美子(人間座)
聞き手:合田団地(努力クラブ)、多田柾博(劇団ACT)
立会い:葛川友理(劇場的春、京都 実行委員)

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WEB連載 第1回「スペース・イサン」

京都演劇の系譜をたどる劇場インタビューシリーズ
WEB連載第1回 「スペース・イサン」

話し手:
松浦武男(スペース・イサンオーナー)
田辺 剛(スペース・イサンプロデューサー、下鴨車窓主宰、劇作家、演出家)

聞き手:
大崎けんじ(イッパイアンテナ主宰、劇作家、演出家)
保田菜央(龍谷大学、劇団未踏座)

立会い:
沢 大洋(劇場的春、京都 実行委員)

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2014年12月17日京都市内喫茶店にて

 

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WEB連載シリーズ 目次

WEB連載
京都演劇の系譜をたどる劇場インタビューシリーズ」

※画像をクリックして頂くとインタビュー記事にとびます。

 

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第一回:「スペース・イサン」

 

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第二回:「人間座スタジオ」

コンセプト 「劇場的春、京都」とは

 京都では、劇場やオルタナティブスペースなどの多彩な会場、さまざまな出自のカンパニーがそれぞれのコミュニティや色をもちながら活動をしており、多様な作品や企画が動く豊かな土壌を持っていると言える。しかしその様子は、小さな「舞台芸術業界」の一歩外から眺めた時に、わかりにくく、とっかかりのつかめないものになっているのではないか。それが、劇場の敷居を無意識に高くして、観劇に訪れるひとびとの足を鈍らせているのではないだろうか。

 「劇場的春、京都」では、その中でも小劇場演劇を中心に、京都の演劇の豊かさを乱暴にひとつにまとめるということではなく、それぞれがばらばらに発信している魅力を、その多彩さはそのままにひとつの形に整えて提示することで、新しい観客との出会いの入口を広げることを目指す。

 なお本取組みは、現在、京都初の国際現代芸術祭であるPARASOPHIA(2015/3/7〜5/10)の開催に合わせ、京都の文化芸術に関する様々な事業を一体的に発信するためのプロジェクト『ART GRID KYOTO』の一環となっている。1年目は、本取組みの意義を共有し深める場として、劇場シンポジウム、オーラルヒストリー等を展開する。

 
主催:「劇場的春、京都」実行委員会
協力:ART GRID KYOTO、京都舞台芸術協会

 

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